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昔話、あるいは自戒

むかし、武来土法師という僧侶がいました。

ある時村で二寸にも満たない小さな箱を使った知恵遊びが流行りました。
武来土法師も例外ではなく、この知恵遊びにのめりこみました。
法師は、ただこの遊びをするのも面白くないと考え箱を見ずに遊ぶことを考えました。

ある晩、法師の夢に不和頭が現れ、こう告げました。「先ず目を開けよ。その道外るるべからず」
しかし見ずに揃えることに夢中になっていた法師は忠告を無視してしまいました。

知恵遊びが流行りだしてからしばらく経ち、その流行りも終わりを迎えようとした頃、
法師が村の皆に向かって言いました。「遂にこの箱の色を見ずとも揃えられるようになった」と。
村の皆がその言葉を疑いながらも法師のもとに集まりました。法師がいんちきできないように村の布屋が
店で一番厚い布で帯を作り、それを巻いて法師は目を隠しました。

しばらくして法師が帯を上げると、辺りには誰もいませんでした。皆途中で帰ってしまったのだろうと
村の中を歩いても誰もいないどころか、人の気すら決して感じられませんでした。これはどうしたものかと目を瞑り
不和頭に祈ったところ、「道を忘れた者に差し伸べる手無し。永久に無をさまようべし」と言われました。

再び目を開けるとそこには村すらありませんでした。
武来土法師は、己の業の深さを暗い無の中でいつまでもいつまでも悔いたのでした。


(※1)箱:立方体の各面が3×3の9個の区画に分かれており、各面に色がついている。また、各行(または列)を自由に回転できる。

(※2)知恵遊び:前述「箱」の色を適当に回転させて崩し、再び各面の色を揃えるというもの。

(※3)不和頭(ふぁず):「知恵遊び」をつかさどる神といわれている。

いつぞやに某とかいうキュービストと考えた昔話(大嘘)を発展させたもの
腐っても民俗学に興味がある人間なのでもう少し何か隠されたメッセージを込めてそれを考察するフリがしたかった。
これは読者への課題としておこう。
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