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EOLR入門

本記事は、Speedcubing Advent calendar 2019の第13日目の記事です。
12日目はRouxMethodさんのRoux methodのコツでした。
14日目は++(Plus)さんのOHのコツ【続編】となります。

突然ですが皆さんは"Rouxvolution"という言葉をご存じでしょうか。もちろん一般的な言葉ではなく造語です。"Roux"と"revolution"を掛け合わせた言葉で、直訳するなら「Roux革命」です。まんまですね。もしかしたら"evolution"との掛け合わせなのかもしれません。違ってたらスミマセン
近年、Roux methodの革命が始まっているのは疑いようもない事実であり、SeanやKianをはじめとするRoux methodの実力者が大会で多くの結果を残していることからもそれがうかがえます。極東の島国である日本にはまだその波が届いていないようですが、このRouxvolutionを日本でも巻き起こすべく、昨日より引き継いだRoux methodのバトンを手にキーボードを踊らせました。
それでは、深くて面白いRoux methodの、そしてEOLRの世界へ、皆さんをご招待します。

EOLR入門


0.用語解説

本記事では専門用語を使って解説していきます。Roux methodで使われる用語は聞いたこともない方も多いでしょう。そこで、本項でその用語を解説していきます。そのために、まずRoux methodという解法の流れを追っていきましょう。
Roux methodとは、
1.L側に1×2×3のブロックを作る(FB,First Block)
2.R側にFBと同じような1×2×3のブロックを作る(SB, Second Block) ◎FBとSBを併せてF2Bとも呼びます。
3.U面コーナーを揃える(CMLL, Corners of the Last Layer ignoring M-slice)
4.残った6つのエッジ(とセンター)を揃える(LSE, Last Six Edges)
このような流れで揃えていく解法です。

また、LSEは更に3つに分けることができ、
4a.EO(エッジの向きを揃える)
4b.ULUR(UL,URエッジを揃える)
4c.EP(残ったエッジの位置を揃える)
という分類ができます。LSEは、4a→4b→4cの順に処理していくということですね。

いきなり用語を詰め込まれて息苦しいかもしれませんが、もうしばらく我慢してください。

更に更に、EOにおいて、向きが正しいエッジのことをGood Edge、そうでないエッジのことをBad Edgeといいます。ここで、「向きが正しい」とは、「そのエッジのU面またはD面を向く色がF2BのD面色またはその対面色」ことを指します。具体例を見てみましょう。
EO1
この場合、Bad EdgeはUF,UL,UR,DFの4つです。
EO3
このケースのBad Edgeは、UF,UB,DF,DBの4つです。何故見えないはずのDBがBad Edgeと分かるのか?その理由は、「Bad Edgeの個数は必ず偶数個になる」からです。
EO2
これは簡単ですね。全てGood EdgeなのでEOが完了している状態となります。

更に更に更に、EOにはいくつかのパターンがありますが、Bad Edgeの個数に応じた名前が付けられています。以下に、EOのパターンと対応する名前が分かる表を置きます。
eosyurui.png

2a,2oはそれぞれ2(adjacent,隣接)と2(opposite,対面)という意味です。
3/1はEOの中でも、とりわけ重要な立ち位置で、これとは別に"Arrow"という名前が付けられています。
また、4/2を除き、全てのEOはまずArrowにしてからArrowを処理するというのがセオリーです(このセオリーが非常に大きな意味を持つので覚えておいてください)。
EOの種類と名前、そしてArrowはこの先沢山出てくるので本記事を読み進める前に是非理解をしておいてほしいです。

前置きが長くなってしまい申し訳ないです。いよいよEOLR入門、スタートです!!!


1.EOLRとは



EOLRとは、雑な説明をすると「Roux methodのsubstepのひとつ」です。これでなるほどと納得する方はいないと思うのでもう少しだけ詳しく説明します。EOLRは、LSEにおけるsubstepのひとつで、4a(EO)と4b(ULUR) を同時に処理する技術になります。更に厳密に言うと、「EOを処理しつつULURエッジをD面にセットする」というのがEOLRです。普通にEO→ULURと処理していくよりも手数が少なくて済みます。
Roux method最大の特徴であり強みでもあるLSEを美しく、エレガントに終わらせるために知っておいて損はない技術と言えるでしょう。次の項から具体的に見ていきます。是非、手元にキューブをご用意して読み進めてください。


2.EOLR Arrow

ArrowのEOLRは、大きく分けて5種類あります。



1.Best Arrow (UF,DF)
Scramble:M' U M U' M' U M' U M U M U'
eolr_arrow_best.jpg
(以降、画像ではU面黄色、F面青の状態でスクランブルしたものを掲載します)

Solution:M
<解説>
Best ArrowはULURエッジがそれぞれArrowの「先端」とD面のBad Edgeである場合です。今回なら、UFとDFです。
これがBestと呼ばれるのは、1手で終わるEOLRだからです。他のエッジもセンターも崩れてるじゃないか!と思うかもしれませんが、ここからはMisoriented centerとして揃えていきます。なんじゃそりゃと思うはずなので、Misoriented centerに関しては別記事を作成しました。こちらからご覧ください↓
Misoriented center解説



2-1.Good Arrow(1) (UR,UB)
Scramble:U M U' M U' M' U' M U' M' U M2 U' M' U2
eolr_arrow_good1.jpg

Solution:M' U' M'
<解説>
Good Arrow(1)はULURエッジが、それぞれ「先端」以外のBad EdgeとU面のGood Edgeにある場合です。今回なら、URとUBです。
この場合は2手目のU回転でBadのULURエッジがはじめにGoodのULURエッジがあった位置に来るようにしましょう。



2-2.Good Arrow(2) (UL,DB)
Scramble:U' M U' M U' M' U' M' U M2 U' M' U M' U2
eolr_arrow_good2.jpg

Solution:M' U' M
<解説>
Good Arrow(2)は(1)をM2したケースと言えます。具体的には、U面のGood ULURがD面のGood ULURになっただけです。
この場合は2手目のU回転でBadのULURエッジを「先端」があった位置に動かします。コミュテータを理解している方なら、U面のULURエッジをD面のBad Edgeへインサートするというイメージをもつとよいでしょう。



3.Adjacent Arrow (UF,UR)
Scramble:M U M' U M' U2 M' U'
eolr_arrow_adjacent.jpg

Solution:U M' U2 M U M
<解説>
Adjacent Arrowはその名の通り、ULURエッジがそれぞれU面の隣接するふたつのBad Edgeである場合です。
この場合はまず「先端」でないULURエッジをD面のBad Edgeの真上まで動かし、M' U2 Mで交換します。すると、Best Arrowが出てくるのでそれを処理します。なお、Bad EdgeがDBにあった場合はM U2 M'です。



4.Bottom Arrow(DF,DB)
Scramble:M U M U M U M' U
eolr_arrow_bottom.jpg

Solution:U' M U' M' U' M
<解説>
Bottom ArrowはULURエッジがともにD面にある場合です。
この場合は「先端」をULまたはURに向けます。次に、D面のGood EdgeがU面に来る方向にM列を動かし、そのU面に来た場所に「先端」をU回転で動かし、最初のM列と逆方向に回すとBest Arrowが出てきます。



5.Bad Arrow
<解説>
上記1~4に属さないArrowはすべてBad caseです。いずれも普段通りの処理をしてULURエッジが移動する場所を読んだ方が早いです。残念。


3.EOLR 0/2

0/2のEOLRは、大きく分けて4種類あります。

1.Adjacent on top(UF,UR)
Scramble:M U' M' U M U' M U'
eolr_0-2_adjacentop.jpg

Solution:M' U' M' U M'
<解説>
ULURエッジの両方がU面の隣接した位置にある場合です。
この場合は最初にM列上のULURエッジがU面にとどまる方向にM列を回し、次にもう片方のULURエッジがはじめに動かしたULURエッジがいる場所に行くようにU回転を回し、その後1手目と同じ方向にM列を回すとBest Arrowが出現するのでそれを処理します。



2.Both on bottom(DF,DB)
Scramble:U' M U' M' U M U' M
eolr_0-2_bothonbottom.jpg
Solution:M' U' M' U M U' M
<解説>
ULURエッジの両方がD面にある場合です。
この場合はM' U' M'を回せばGood Arrowが出現します。M' U M', M U' M, M U MでもOKです。



3.One up one down(UR,DF)
Scramble:U' M U' M' U' M U M U2
eolr_0-2_onetoponedown.jpg

Solution:M' U M' U' M U' M
<解説>
ULURエッジの片方がU面に、もう片方がD面にある場合です。
この場合はまずU面のULURエッジをURまたはULに逃がしておきます(今回は大丈夫ですが)。それから、D面のULURエッジがU面に来る方向へM列を回し、もう片方のULURエッジをはじめに動かしたULURエッジがいる場所に行くようにU回転を回し、その後1手目と同じ方向にM列を回すとGood Arrowが出現します。



4.Worst Case(UF,UB)
Scramble:M' U' M' U' M' U2 M U' M U' M' U'
eolr_0-2_worst.jpg

Solution:U' M' U' M U' M U2 M' U' M
<解説>
ULURエッジがいずれもU面かつ対面上にある場合です。
この場合はまずULURエッジをM列上から逃がし、M' U' M U' M U2 M'を回すとBest Arrowが出現します。Worstと呼ばれるように、手数が長いためこれを使わず普通の処理でも問題ないでしょう。


4.EOLRの"ミソ"

本記事は入門編ですので、具体的なEOLRはここら辺にしておいてEOLR全般に言える話をしていきます。
ここまでふたつのEOケースにおけるEOLRを見てきましたが、その解説に違和感を覚えた方はいるのではないでしょうか。「パターンも処理方法も解説がなんかまどろっこしい」と。「ULURエッジがU面に残るようにM列を動かす」「U回転でBadのULURエッジを『先端』があった位置に動かし」…まるでキューブをはじめたばかりの初心者に教えるときのような言い方が目立っていたと思います。しかし、これには訳があります。端的に述べましょう。それは、

EOLRは手順ではないからです。

…は?と思うかもしれませんがブラウザバックはしないで頂きたい。そう、EOLRはOLLやPLLとは違い、むしろF2Lと近い感覚で処理するものなのです!!

例を挙げましょう。
Scramble:U2 M' U M' U' M U' M U2 M' U2 M U2
eolr_1-1_miso.jpg

1/1のパターンです。一旦EOLRから離れて普通に処理する場合を考えます。1/1には処理方法が6つあります。
ルート1.M' U' M'→Arrow
ルート2.M' U M'→Arrow
ルート3.U' M' U M→Arrow
ルート4.U M' U' M→Arrow
ルート5:M U' M'→Arrow
ルート6:M U M'→Arrow

以上6つです。それでは、ここでEOLRを思い出して、上のスクランブルに対し各ルートを辿ってみると、出現するArrowは
ルート1→Bottom Arrow
ルート2→Good Arrow
ルート3→Bad Arrow
ルート4→Adjacent Arrow
ルート5→Best Arrow
ルート6→Adjacent Arrow

となります。つまり、この場合のEOLRはM U' M' U' M'(M U' M' +Best Arrow)ということですね。M' U M' U M U' M (M' U M' +Good Arrow)でも良いでしょう。

さて、冒頭で私はこう述べました。「全てのEOはまずArrowにしてからArrowを処理する」と。そして、例で見たようにあるEOに対して、Arrowの作り方はいくつか存在します。結局、EOLRが手順ではないというのは、EOLRの構造が
「Best or Good Arrowを作る」+「そのArrowの処理をする」というものであることから言えることなのです。
F2Lと似ていると言ったのは、「IT化をした後にその基本手順を使って揃える」というF2Lの基本構造とEOLRの構造が酷似しているから。

数あるArrowの中からBest or Good Arrowをつくる。これがEOLRの"ミソ"なのです。

5.EOLRの必要性

本項では、EOLRの必要性について議論していきたいと思います。まず先に私の考えを述べておくと、「両手では使えた方がいいが重要度は高くない。片手では必要である」というものです。

EOLRに限らず、全てのsubtep系技術の恩恵は手数を減らせることにあります。しかしながら、普通にソルブしていれば必要のなかった判断を要求されてしまうこともまた事実です。EOLRについて見ていくと、減らせる手数は多くて5~6手程度であり、2、3手しか減らせない場合もあります。それに対し、判断基準は簡単とは言えません。
必要性2
このEOを見てください。2a/2のBest caseです。ULURエッジがどちらもU面のBad Edgeの場合ですね。これの判断は簡単ですが、
必要性1
こちらはどうでしょうか。この2o/2は片方のULURエッジはすぐに確認できますがもう一方はDFかDBかを判断するのは不可能です。

判断不可能なパターンも存在するという意味ではZBLLより難しい場合があるといっても過言ではないでしょう。簡単なものは非常に簡単ですが、その逆も然り。そして、tpsを出しやすいLSEにおいて、たかだか数手を減らせる恩恵が得られるかというと、片手で出しうる速度帯ではイエス、両手の速度帯ではノーであるというのが私の考えです。つまり、「判断の難しさに見合うだけのうま味が片手では有るが両手では無い」ということです。

EOLRの必要性に関しては、CFOPにおけるSuneのCOLLの必要性と類似していると指摘した方がいましたが、その通りだと感じます。Suneも普通の7手の手順を回し、PLLを回した方が早いかもしれません。LSEも同様に、ULURの位置を読んでおけばEOLRなど使わずともじゅうぶん早く処理できます。むしろ、読むべきなのがULエッジとURエッジのたったふたつだけにもかかわらず高速で処理できるのでEOLRを使わない方が早い可能性すらあるのです。

それでも私がEOLRをやるのはEOLRの可能性を信じているから。そして、「普通のLSE処理しかできない」ことと「EOLRを知ったうえで取捨選択の結果、普通のLSEをやること」では後者の方が良いと考えているからです。

6.あとがき

まず、ここまで読み進めてくださったあなたに、感謝したいと思います。ありがとう。

COLLやZBLLのようなsubstep系技術であるにもかかわらず、その構造はF2Lと似ているという摩訶不思議で面白い技術、EOLRを紹介させてもらいました。

ところで、あなたの3×3のメイン解法は何でしょうか。

CFOPのあなたへ。EOLRは無縁の技術かもしれません。それでもここまで読んだということは恐らく相当な物好きかヒマだったのでしょう。もしあなたが物好きなら、メイン解法を変えるまでのことはしなくてもいいのでRoux methodをやってみてはいかがでしょうか。新たな知見が得られるかもしれませんよ。

Roux methodのあなたへ。今日から少しでも、EOLRを始めてみてほしいです。実際に使うか否かは別として、Rouxの一番面白いパートであるLSEが更に面白くなることでしょう。本音?EOLRの話できる人が欲しいのです

それ以外の解法のあなたへ。是非Roux methodをやりましょう!!!無理強いはしませんが。

また、本記事はRami君に校正をご協力いただきました。ありがとうございます。Rami君の記事も是非読んでみてください。

皆様の更なるキューブライフの充実、そしてRoux methodの発展を願って本記事を締めたいと思います。

【お知らせ】本記事第4項、「EOLRのミソ」において、例を挙げたスクランブルに更に短いルートが存在することが判明したので該当部分を修正しました。(2020.1/23)
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