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FB100本ノックを始める前に

本記事は、Speedcubing Advent Calendar 2021の20日目の記事である「FB100本ノック」として執筆された記事群のひとつです。
「FB100本ノック ハブ」はこちらからどうぞ。

本記事では、主に用語等をはじめとして、FB100本ノックを始める前に知っておいてほしい事が書かれています。本編を読む前に一通り目を通してもらえたらと思います。






1. FB100本ノックの対象者と注意


まず、記事の対象者についてです。FB100本ノックでは、Roux methodでキューブが解ける多くの人に読んでほしいと考えています。この条件を満足しているならば、Rouxがメインの解法であるかどうか、またそのタイムなどは問いません。

次に、本記事を読み進めるにあたって、ひとつ注意してほしいことがあります。
それは、FB100本ノックは私がほぼ一人で書いたものであるということです。これはすなわち、「FB100本ノックにおける解答は、執筆者である私の“癖”が出ているものである」ことを意味しています。

FBには定石と呼ばれるものが多くないという性質上、このパートでは回している人の“癖”が出やすいパートでもあります。それは、例えばFBの色や回し方などに現れますが、この“癖”は、時としてより簡単なFBが見つけられなくなる枷となり得る存在でもあります。事実として、私自身もつい最近まで他のキューバーが教えてくれるまで使えていなかった回し方が存在しました。
記事内に登場するすべてのスクランブルに対し、私は10手以内の解答を示していますが、これが最適解であるという保証はありません。記事内のスクランブルで作られたFBは、あくまで私の“癖”のもとに作られたものであることに留意してください。

くどくどと話してしまいましたが、結論としては以下の通りです。
「良い回し方だなと思ってもらえたなら是非それを盗んでください。あまり良い回し方でないなと思ったら無視してください。それは恐らく私の“癖”が原因だからです。」




2.用語集


本項では、FB100本ノックを読み進めていく上で覚えておいてほしい用語とその解説を記述しています。解説等を簡略化する目的でやむを得ず独自の用語も導入しているため、一度は目を通してください。

2-1.Roux methodの用語

2-1-1.FB
First Blockの略。Roux methodにおける最初のパートであり、基本的にL面下部に1x2x3のブロックを作ることを目標とします。また、その作成にかかる手数は10手がひとつの指標とされています。

2-1-2.SB
Second Blockの略。FBの次のパートであり、FBの対面上、R面下部に同じく1x2x3のブロックを作ることを目標とします。FB100本ノックではSBに基本的に触れませんが、一部の解説に「SBへのつながりを良くする目的で~」等の記述があります。

2-1-3.スクエア
1x2x2のブロックの事を指し、WCA公式競技であるSquare-1とは関係ありません。本記事第3項にてもう少し詳しく記述しますが、FB作成の基本方針のひとつとして、まずスクエアを作ることが挙げられます。


2-2.位置とパーツ
例えば、“DL”とだけ記述されていた場合、それには2通りの解釈があります。1つ目はDLという位置を指す、という解釈で、2つ目はキューブの完成状態においてDLに存在する特定のパーツを指す、という解釈です。これらを明確に区別できるようにするために、それぞれを以下のように呼ぶことにします。

2-2-1.位置
上記の解釈のうち、前者の方を指したい場合(すなわち、ある位置XYを指したい場合)、位置XYと表記することにします。

2-2-2.パーツ
上記の解釈のうち、後者の方を指したい場合(すなわち、キューブの完成状態においてある位置XYに存在する特定のパーツを指したい場合)、単にXYと表記することにします。

位置とパーツについて、例をはさんで見てみます。
Scramble: D' F D' F2 L' U2 F2 R' F' R2 D2 B2 D' R2 U D2 R2 F2 D
location_piece.jpg
ここで、D面色白で橙のFBを作ることを考えます。このとき、DLに相当するのは白橙エッジです。これを探すと、位置BRにあります。
また、今度はD面色は同じく白で緑のFBを作る場合を考えてみます。このとき、DLに相当するのは白緑エッジです。これを探すと、位置ULにあります。


2-3.ペア

2-3-1.LF側ペア
LF側ペアとは、LFとDFLが正しくつながっている1x1x2のブロックのことを指します。
LFpair_2.jpg
橙でFBを作る場合のLF側ペアの例

2-3-2.LB側ペア
LB側ペアとは、LBとDLBが正しくつながっている1x1x2のブロックのことを指します。
LBpair_3.jpg
橙でFBを作る場合のLB側ペアの例




3.FB作成の大まかな方針


冒頭で、「FBには定石と呼ばれるものが多くない」と述べました。それは間違いない事実であり、その事実こそがFBの難易度を高くしている張本人であると考えています。しかし同時に、「多くない」というだけで、存在しないわけでもないとも考えています。

本項では、FB作成における基本方針について見ていきます。本項を見ずともFB100本ノックを読み進めることは可能ですが、本項の内容を抑えておくことでより内容を吸収しやすくなることでしょう。

まずは、以下の図をご覧ください。FBの大まかな流れを図示したものです。
fb route png

FB作成の方針は、大まかに2つに分けることができます。それが図における青枠内の「スクエア」または「1x1x3」を作ることです。更に、これらのブロックを作るためのルートとしていくつかの方法が挙げられ、こちらは図における黄枠内の「DL solved」、「DL pairing」などです。これらはスクランブル状態の時点で、発見またはこれらの状態に1~2手で実現可能な状態で発見されることが多く、基本的にこれらをヒントとしてFB作成方針を立てていくことになります。また、FB作成方針のヒントとしては「LFまたはLB側ペアが存在または1手で作成可能である」というものもあります。

以上のことをまとめると、スクランブル状態から、存在または数手で作成可能な「DL solved」、「DL pairing」、「LFまたはLB側ペア」のいずれかを発見し、それを起点としてスクエアまたは1x1x3を作るというのがFB作成の大まかな方針となります。

ただし、全てのスクランブルでこのことが言えるかというとそうではなく、ごく一部のスクランブルには例外的に直接1x1x3を作成可能なものも存在します。




3.FB100本ノックの進め方


本項では、実際にどのように進めていくかを例を交えて見ていきます。
まず大前提として、3x3x3は世界配色のものを使用します。そして、D面色は主に白を使用し、FB色の固定はしません。また、稀にD面色に黄を使います。すなわち、x2 y neutralと呼ばれる計8通りの選択肢の中からより良いFBを探していきます。

まず、解説等は伏せられたままスクランブルだけが記述されています。実際に手元にキューブを用意して考えてみてください。

0.L2 U2 B2 L2 U' L2 D F2 R2 U' B' L F L' D' F2 R F2 L2 F2




ここでひとつ無駄話をしておきたいと思います。

FB100本ノックで使用したスクランブルは、csTimerのスクランブル生成機能を利用して生成されました。本編は各部25スクランブルずつ計4部ありますが、それはあくまでスクランブル数で区切っただけであり、部ごとの難易度が大きく異なっていたり、各部で似たような方針でFBを作るスクランブルが多く集合したりしているということはありません。

私が記事の執筆にあたり、その題を「FB例題集」などの名称にしなかったのにはそういった理由があります。「例題集」というと、たとえば英語のそれは多くの場合、特定の文法などを鍛えるために似たような形の問題が集合しています。それは確かに例題集としては正しいあり方であることは間違いありませんが、私がこの記事で目指したいものはそこではなく、ランダムにスクランブルを与えられても安定してFBを作ることができるようになってほしいという願いがあります。ゆえに、記事には「FB100本ノック」という名を、本編はランダムに出力されたスクランブルをそのまま使用しています。

…というのが建前です。本音は、いちいち100個のスクランブルに対してこれはこのパターン、というような判別作業を行うのが非常に面倒であること、またそうした判別が難しいスクランブルも存在することが理由です。
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